Vol.21 券売機の未来が見えた日
冷やっこ~い編@づけ麺 秀
更新日:2013/12/2
9月12日。引き戸を開けて入ると、昼食の混雑もすでに収まり、客は奥に1人だけだった。
券売機の前に立つ。3列に並んだボタンの前を指で横になぞっていたら、後ろから声。
「一番上の『味噌』、それと『辛し』は割とこってりしたづけ麺で、あっさりしたのがお好みでしたら、2段目のを……」
空中に「Z」を繰り返し描いている一見の客(私)に、メニューを解説してくれているのだ。
今思えば、その日の私は朝から妙にぼーっとしていたのだが、まだその時は自覚がない。
2段目のボタンの1つに上から紙が貼られていて、何度も押されたために両端がまくれ上がっている。
マジックで「……麺」と書かれたその紙を見て、(ああ、期間限定だからか)と納得し、目的の「緑茶冷麺」だと判断してボタンを押す。
カウンター席に座って肘をつくと、おばあさんが1人入ってきた。
「つけ麺あるかしら」
「ございます。そこに券売機がありますので」
言いながら、店の兄さんはカウンターを出て券売機の横まで行く。
ちょうど、おばあさんが陰に隠れて、兄さんの広い背中しか見えない。
「この『全部のせ』っていうのは何?」
「そうですね、五目蕎麦をイメージしていただくと……」
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